今回は、病院側に開腹手術の時期を失した過失があるとされた事例を2件ご紹介します。
No.286の事案では、過失と死亡との因果関係は否定されましたが、適切な治療を受けて治癒する機会と可能性を奪われたことによる損害(精神的苦痛に対する慰謝料)として、2000万円という高額の賠償が命じられました。
なお、死亡した患者の兄(患者が勤めていた会社の代表取締役で、患者の将来に期待していた)固有の慰謝料は認めませんでした。
No.287の事案では、過失と死亡との因果関係を肯定し、死亡した患者の逸失利益も、損害に含める判断が出されました。
他方で、裁判所は、医療法人と死亡した患者との間の医療契約の債務不履行により、患者の両親が固有の慰謝料請求権を取得するものとは解し難いとして、両親固有の慰謝料は認めませんでした。
両事案とも実務の参考になろうかと存じます。